金属加工技術の歴史を紹介する本館と日本一のコレクションを誇る矢立煙管館、金属洋食器をメインにした新館があり、匠たちによって綴られてきた地場産業の歩みを学ぶことができます。
ところでこの燕市産業史料館は、「資料館」ではなく「史料館」。
資料とは、何かを調べたりする上で参考にする書物などのことですが、史料は実際に過去の人が遺した物をさします。つまりここにあるものはすべて本物。職人が丹精込めて作ったものや、大切に使われてきたものが展示されています。
それがよくわかるのが、私のお気に入りの場所である本館の展示です。
作り上げられた製品はもちろんのこと、職人が物作りを行なったスペースがそのまま保存展示されているんです。そのこだわりは座っていた場所とその周りの土間の土から道具、部屋の調度品に至るまで、丸ごと保存しています。
出来上がった製品は残っても、それを作り上げた道具は職人さんが亡くなると処分されたりして、残らないことが多いのだそう。後世に、この技はこの道具があるからこそできた、という事実も伝える展示、とっても素晴らしいなと思います。まるで今にも職人さんがやってきて作業の続きを始めそうな臨場感があり、なんだかドキドキしてしまいます。
続いて本館隣の矢立煙管館は、燕市出身の丸山清次郎氏(ウインドミル株式会社創始者)が収集した江戸から明治にかけての煙管と矢立のコレクションからなります。
かつて燕は煙管の産地で、最盛期の昭和初期には1日6万本も作られ、全国生産の9割を占めたといいます。しかし戦争や紙巻煙草の影響により衰退し、現在では燕のキセル職人はただ一人だそうです。
オーダーメイドが基本で、中には年収2年分もするような高価なものもあるといい、細かな装飾が施された逸品にはオーダーした当人のこだわりと作り手の思いが詰まっています。今ではほとんど見かけることのない煙管だけに、こんなにデコラティブなものもあるんだぁと驚きの連続です。
新館は金属洋食器の展示がメイン。縄文時代の遺物である石匙など、ヒトが食べ物をどのような道具を使って食べていたかに始まり、文明開化以来の洋食器の発展を様々なカトラリーや模型などで学べます。
第一次世界大戦中の最盛期には1日2000本もの量のスプーンとフォークが作られたのだとか。燕の技術は古くから日本中に知れ渡っていたんですね。
最奥の展示室にある伊藤豊成氏のスプーンのコレクションも見事なもの。世界の珍品など約5000点が飾られています。
食べ物を掬うというシンプルな道具でありながら、これほど材質や装飾にバリエーションがあるんだという感心とともに、地域性やお国柄が見て取れて、じっくり見れば見るほどおもしろいコーナーです。
こうして一度に金属加工の技術が学べる「燕市産業史料館」。
時代の流れの中で廃れていくモノがあってもその技術が次の産物に活かされているんだなぁと思うと、職人魂を感じます。燕の産業の歴史にご興味のある方には絶対オススメ。オープンファクトリー巡りの前に立ち寄るとより理解が深まりますよ!
【燕市産業史料館】
住 所 新潟県燕市大曲4330-1
電 話 0256-63-7666
開館時間 9:00〜16:30(入館は閉館の30分前まで)
休 み 月曜(祝日の場合翌日)、祝日の翌日、年末年始
入館料金 高校生以上300円、子供100円
アクセス 上越新幹線燕三条駅から車で5分、三条燕ICから車で5分
U R L http://www.city.tsubame.niigata.jp/shiryou/index.html