「え? ちょっと待って、磨きって何?」
という方のためにご説明しますと、プレスや溶接、メッキ、洗浄などの作業を経て、金属加工の最終工程に施す研磨=鏡面磨きのこと。羽布と呼ばれる麻や綿を束ねた円形の研磨機で磨くことで、ステンレスの曇った表面がまるで鏡のようにピカピカに光り出します。
この鏡面磨きが施されたものを実は我々、毎日のように目にしているんです。スプーンやフォークはもちろんですが、料理に使うボウルやお玉、浄水器、自転車、道路のカーブミラー、そして飛行機の翼まで。そうそう、アップル社のiPodも実は燕で磨かれていたんですよ!
その磨きの技を間近に見て、磨きの体験ができるのが、燕市にある「磨き屋一番館」さんです。
こちらは若い職人を育成するための鏡面磨きの学校。高齢化などで減りつつある磨きの職人を育てることを目的に、平成19年に燕市により開設されました。学校とはいえ3年間の修練中にはお給料ももらえ、磨いているのは教材ではなくすべて商品。卒業生の独立や開業支援もしているとのことで、最初から将来自分の工場を持つことを想定した実地の訓練ができるんですね。
磨き体験は、小・中学生はスプーンを、大人はビアカップを磨くことができます。
まず職員の方が、燕三条の金属加工の歴史や工程を簡単に解説をしてくれます。そのあと、実際に生徒さんが作業している姿を見学します。「これをこれからやるのかぁ」とイメージをつかみます。
そしていよいよビアカップ磨き体験です。エプロンと軍手を借りて準備OK!
1分間に2000〜2300回転もする羽布にまずは研磨剤を塗るのですが、その時点ですごい勢いにびっくり。油断するとぐるぐるっと巻き込まれてしまいそう。生徒さんたちは静々と作業していたのでそれほど力は要らないと思ったのですが、これはしっかり持たないと。
膝の上に両腕を固定し、しっかりとカップを支え持ったら、両膝を左右に動かして体全体で磨いていきます。一つの面を左右に磨いたら、少しずらしてまた左右に…。その繰り返しですが、手のひらの筋肉がだんだん疲れてきます。仕上げ磨きが終わる頃には、いつも使わない筋肉を酷使した感ありあり(笑)。職人さんは本当にすごいですね。
さぁ出来上がり! ちゃんと顔が映るようになりました! これで今夜から、ますます美味しいビールがいただけそうです。
金属加工の歴史が学べて、やってみなければわからなかった磨きの難しさを知り、自分で磨いたビアカップがお土産にできちゃうこの体験、ビール好きならとりあえずやっておいて損はないです。私も自分の分だけじゃ飽き足らず、5脚セットになるまで通いつめちゃおうかと考え中(笑)。
皆さまもぜひいかがでしょうか?
《磨き屋一番館》
住 所 〒959-1276 新潟県燕市小池3633番地7
電 話 0256-61-6701
U R L http://www.tsubamekenma.com/
定 休 日 燕三条産業カレンダーに準ずる
体 験 ビアカップ磨き(大人用)1500円、スプーン磨き(子供用)800円、
見学は無料、所要約1時間、いずれも1週間前までに要予約
アクセス JR燕三条駅から車で10分